シナイ山のラクダ君
標高千メーター地点あたりでたゆたうラクダ君。彼が見つめるのは峻厳なシナイの山々。

厚めの上着を着ていこう。
我々姉妹がシナイ山に登ったのは5月初旬、事前に友人から「あったかくしてきてねんv」と念押しされていた。

だが、山なんて近所の六甲山くらいにしか登ったことないくせして、「寒いったってエベレストじゃあるまいし、たかが標高2285mじゃーん!エジプト人って大げさだなぁ」とナメてかかったのが大間違い。
そんな身の程知らずの我々の頭上にその後、シナイの山神の鉄槌が振りおろされることになる……。

とにかくここがエジプトだとは信じられないくらい寒い。
ヒィヒィ言いながら登っている内は寒さに気付かないが、山頂に着いたとたん温まった体からあっという間に体温が奪い去られ、一瞬でアルマジロ化するというシステムである。

ユニクロの野暮ったいフリースを着ていたヘボピーですら歯をガチガチいわせていたんだから、カッコつけてゴルチェのペラいジャケットしか着ていなかった私に至っては……凍死寸前。
カウチンセーター、毛糸の帽子にマフラー、と完全装備の欧米人を軟弱者と鼻であざ笑った自分に罰を与えたい。

そんなアルマジロな人のために、山頂には3,4件の休憩所が完備されており、一杯5ポンド(百円)という映画館内で売ってる生ビールのようなボリ価格のチャイ(お茶)で暖をとりつつ、夜が明けるまでそこで休める。

ただ長居は無用!
定期的に小屋の外に目配りしておかないと、あとから登ってきた人たちにご来光鑑賞のグッドポジションが埋め尽くされてしまうので、うかうかせず早めに場所取りするのも重要だ。

早めに到着して小屋の中でまったりしていた私も、ハッと気付いて小屋から飛び出すと、目を付けていた場所にはでかい欧米男の生け垣が出来ていたもんだから、もーあせりまくり!
半泣きで他の場所を探しているうちに、崖から落下して山頂からふもとまでそのまま転げ落ちそうになるくらいあわてた。

また、寒さに震える方には、数え切れないほどの観光客の体を優しく包んできた毛布も一枚5ポンドいや10ポンドだったかな?で貸してくれる。

ただ、ぜんぜん清潔好きではない私の目から見ても、体がかゆくなりそうな代物だったので、神経質な人は自分でガッチリ防寒して行くが吉。

なお、シナイ山頂では、この貸し毛布の呼び込みが「クレオパトラ~!」「アリババ~!」「クレオパトラ~!」「アリババ~!」と肌を刺す夜明けの空気を震わせている。

女性には「クレオパトラ」、男性には「アリババ」と呼びかけるようだが、なんで男が宝を奪われるマヌケな盗賊アリババなのか?
「男は誰でも欲張りな女(クレオパトラ)の前ではアリババ」ってことなのか?
どうでもいいけどその真相は今もって不明である。

<次ページにつづく>

シナイ山のラクダ君
山は登りより下りの方がキツいと言うが、働き者のラクダ君とラクダ使いは、帰路でもちゃんとこうやって足がヨロヨロのカモを待ってくれているのだ。