エジプトのウエディングドレス
まっくらな中、一軒だけぽつんと灯りをともして営業中のウエディングドレス屋さん。マッチ売りの少女が炎の中に見た夢の世界みたいだ。

<暗いっ!!>

懐中電灯を持っていこう。
あらゆる場所が煌々と照らされた国に住む日本人は、エジプトに到着してまず、街が全体的に暗いことにちょっとした衝撃を受けるだろう。

カイロの中心部は日本並みに明るいものの、ミニヤやルクソールやアスワンは一本裏道に入るとそもそも街灯すらなかったりする。

あってもあんまし明るくない上に色がオレンジ色だったりしてやたらとメランコリックなムード。そこへどこからともなくアザーン(一日五回のイスラムの祈りをうながす呼びかけ)が聞こえてきたりすると「仕事たまってるだろうなぁ……。」と気分は急速にたそがれてくる。

日本ではとっくに照明をつけるような時刻に街のレストランに行くと、準備中かと思いきや、すでに薄暗い中でお食事中の先客で満席だったりしてびびらされる。


夜の高速道路でも、ヘッドライトを点灯せずに猛スピードで突っ込んでくる対向車のなんと多いことか!
エジプト人に言わせると「ライトをつけるとライトの寿命が縮まる」からだそうだが、縮まるのはこっちの寿命だよっ!
けれどこれも慣れの問題なようで、エジプトの運転手は今夜もライトをつけず悠々と運転している。

エジプトのトラック
こんな無茶な荷を積んだトラックが無灯火で激走してきたら……。 思わず死を覚悟する一瞬。

おっと、シナイ山から話が逸れてしまった。エジプトでは町中でもそんなに明るくない、いわんやシナイ山は……と言いたかっただけなのだ。

灯りがあるのは登山口のビジターセンターのみ。それ以降は闇、闇、ひたすら闇。

我々が登った日は、月は三日月、満天の星空だったが「星明かりを頼りに夜道を歩く」なんてそんなロマンチックシーン、実際には無理だと知った。もうボーイズラブ小説には使えないネタだ。

懐中電灯を忘れた人はガイドに頼るか、他の登山客が来るのを待って、そのあとをカルガモのヒナのようにくっついて行こう。

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エジプトの屋台
日中は暑いからだろう。ショッピングゾーンは夜がとっぷり更けてからの方がにぎわっていた。 並べるのも片づけるのもめんどくさそうな移動おもちゃ屋さん。