エジプトのおもちゃ
郷愁を誘うオレンジ色の灯りに照らされながら、動物たちは故郷の夢をみているのだろうか。

<トイレがないっ!>

トイレは登山直前に済ませておこう。

山頂に至る道に売店はいくつもあるが、ズバリ掘っ建て小屋なのでトイレなど完備していない。
ガイドブックによると山頂にもトイレがあるそうなのだが……私にはちょっと分からなかった。三位一体聖堂があり時折修道士がお祈りに来ているそう。

だが、ここももちろん「トイレご自由にお使い下さい」という場所ではないので、トイレはホテルか登山口にあるビジターセンターで済ませて行くのが安全。

シナイ山
シナイ山
365度どこからでも排泄シーンを鑑賞可能な下山途中の風景。羞恥プレイ上級者向け。

……とは言うものの、中にはヘボピーさんのように突発的な便意に襲われる方もおられることと思う。
そういう時には恥ずかしいなんて言わずに、行きがけにそこらでやってしまおう。
ちょっと離れると鼻をつままれても分からないくらいの暗闇がどこまでも広がっているので、ある意味やりたい放題。誰からも貴女のお尻は見えないのでご心配なく。

ただ、明るい陽の光に照らされる帰り道には「ちょっとそこらで」というのは無理かもしれない。

私は「エジプト・トイレレポート」を先生に提出するため、ひたすらトイレポイントをチェックしつつ下山したのだが、どうも用を足せるような岩陰はなさそうだ。
もちろん、下山道からかなり離れたらあるのだろうが、下手に道から離れると足元がデンジャラー。
パンツを半分おろしたまま崖下に転落……なんて羽目になりかねない。

下山時は人が集中して、道は各国人種が数珠つなぎ状態。
そんな世界の人々の好奇の視線をさえぎってくれるような巨岩が、下山三分の二あたりのポイントに一つだけあったが、裏に回ってみても微妙に人目にさらされる角度だったので、下山途中のトイレはやっぱり諦めるしかなさそうだ。

<キツいっ!>

自分の体調とはよ~く相談しよう。
↑これは主にヘボピーさんの言だな。

私もヘボピー同様運動不足。加えて古代エジプト遺跡と違い、シナイ山は私が萌えパワーを推進力にできる場所じゃないはずなのだが、私にとっては想像したほどキツくなかったよ。え?もう山頂なの?あっけないなぁ!ってカンジ。

ただ、観光業の友人の経験によると、ツアーで引率した中年紳士が体調不良のまま登頂したのはいいが、なんと山頂で心臓発作!
幸運なことにちょうど「三位一体聖堂」が開いており、そこで担架を作って皆で担いで下山、そのままイスラエルの病院へ搬送したそうだが、その後、紳士がどうなったかまでは彼は知らないそうだ……ぶるっ。

このように体調不良のまま登ると、自分が辛いだけではなく下手すると大騒動になるのでそこら辺よく考えよう。

<風もキツいっ!>

コンタクト者は眼鏡を忘れず持っていこう。
山登り自体はそれほどキツくなかったものの、私は「顔に吹きつける強烈な風」に悩まされた。

裸眼では一歩たりとも歩けない超ド近眼な私は、ハードコンタクトにゴミが入るのを恐れてソフトコンタクトをしていたのだが、風に吹かれてコンタクトがパリんパリん!
風よけのサングラスをすると、ただでさえ暗い夜道が墨ベタ塗りでまるきり座頭市状態……

仕方なく途中の休憩スポットでメガネっ子に変身!
だからシナイ山頂で撮影した写真は、すべてが寒気で鼻を赤くした髪ボサボサのメガネっ子姿で写っている。

電球一個の薄暗い山小屋でドキドキしながらコンタクトの着脱をするくらいなら、近眼の方ははじめからメガネで登山した方がいいかもね。