ありったけの英語力をふりしぼり「再びここに戻って金を払うから待っててくれ。」と言うと、「20ドル」とふっかけてくるめんどり。
一刻も早くこいつから離れたかったのでとりあえずOKし、姉を探しに一人で頂上まで登ることを決意。真っ暗闇の道にビビりながら歩を進めると、ラクダ使い達と一緒にいた若い男が、ついて来いと合図する。道案内をしてくれるようだ。ありがたい!
そこから先は、ラクダ君が登れないのもうなずく程の岩山。足をすべらせ骨折するラクダが目に浮かぶ。しかし男は、一個につき高さが駅の階段2~3段分はある岩を、すごいスピードで登って行くのだ。
おい、私は普段1日20分程度しか歩かない女なんだよ!あんたの後方で変な呼吸音がしているのに気付けよ!ああっ、口から心臓が飛び出るっ。心臓マヒを起して私の人生こんな所で終わるのか…?
「もうアカン!」私はたまらず男のシャツをガシッと掴んだ。すると、今度は手をひっぱってくれるのはいいのだが、何を勘違いしたのか、小休憩の間に肩に手を廻したり、手をさすってきたりするのだ。
日本から何万キロも離れたシナイ山でセクハラ…。いくら結婚するまで女性に触れる機会が皆無とはいえ、許せない。でも、私には手を払いのける気力もなかった。
それからさらに無我夢中でついて行くと、「ここに座れ」男が合図する。ここが頂上だというけど、周りには誰もいないし、風がビュービュー吹く音が聞こえるだけ。もしかして別の所に連れて来られた!?
取り合えず座ると、男は私の太ももをさわさわと触ってきた。(コワイッ!)
頭の中では「レイプ」の3文字がぐるぐる廻りだし、恐怖に耐えられなくなった私はガバッと立ち上がると、ついにその場から逃げ出した。
すると、風に乗って賛美歌が聞こえてきて何か建物が見える。そう、ここはすでに頂上だったのだ。
さっきの所は反対側だったんだ。やはり違う方向に連れて行かれたんじゃないか!しかも、2番乗りである。私は一体どんなスパルタ式で登らされたんだ?

疲労困憊の哀れなヘボピーさん。
ダニがうじゃうじゃいそうなゴワゴワの毛布のレンタル料は10ポンド(200円)と有無を言わさぬボリプライス。それでも借りなきゃ寒くて死んじゃいそうだから、モーローとなった人々は言われるがままに財布を開くのだ。
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