2019年12月31日 (火)
来年は子年ということで、新年のご挨拶用アイキャッチ画像にチューチュー写真を使うべく、これまでネズミ族にカメラを向けた記憶を必死でたどっていた。
だが、ハムスターオーナーかミッキーファンでない限り、ネズミはカメラを向けられるチャンス少なめな生き物らしい。
記憶にヒットしたのは30年ほど前、どこぞの動物園で「わぁー!でっかいネズミ!」とはしゃいで撮ったカピバラくらい。昔の話すぎて写真データなんか残っていない。
(カピバラってほんとにネズミだっけ?と不安になって調べたところ、やっぱネズミでした。ネズミ目テンジクネズミ科カピバラ属、現生種最大のげっ歯類。)
ならば古代エジプトの遺物のネズミモチーフはどうよ?と一休さんのように頭をひねった結果、どこぞの墓壁画やオストラコン(※)を目にした記憶が6、7件ヒット。
※ 文字や絵が描かれた陶片または石
だがその「どこぞ」がはっきりしないものだから、数時間かけて壁画の中のネズミたちを探したところ(こんなことばかりに時間を取られていてはサイト更新が進まないはずだ)、山のような写真の間からチョロチョロ出てきたネズミっぽい生き物は、もれなく尻尾が太かった——これ、ネズミちゃう!マングースや!
そんなこんなでネズミ起用は断念。代わりに登場してもらったのは、カイロ博物館のガラスケースの片隅で、何のキャプションも添えられず雑に並べられていた不思議な動物である。
尻尾の感じからして少なくともネズミではない。
私はこれまでマングースだと思っていたが、改めてまじまじ見ると「背中の茶色いライン」を力強く着色した古代職人の「縞がある動物やねん!」という気持ちがバリバリ伝わってきたので、マングース説にも自信がなくなってきた。
縞だけ見るとリスっぽいものの、体型がリスではない。
リス?マングース?ひょっとして犬?正体不明の謎の小像。
職人の手すさびだろうか?子供のおもちゃにでもしたのだろうか?
いつ、何を、なぜ作ろうとしたのか何ひとつ分からない、数千年前に土くれをこねて生まれた小さな親子像。
ただひとつだけ伝わってくるのは、職人がこれをなんとも優しい気持ちで作ったことだ。
技術は稚拙でまるで子供の作品みたいだけれど、母親に甘える子の無邪気と、子を慈しむ母親の愛情と、彼らをモチーフに選んだ職人の暖かな視線は、数千年の時を超えて胸を打つ。
ほんとうのところ、きらめく黄金の宝物や人類史的に貴重な遺物の中でひっそりと抱き合うこの親子像は、私がカイロ博物館で一番愛する作品なのだ。