2005年5月 エジプトに旅行した際の記録です
有給休暇……。それは法的に保証されたいわゆるひとつの労働者の権利である。
だが、人件費削減のため、リストラという名の死神が大鎌をふるう昨今、この制度なぞ多くの企業ではあってなきがごとしであることは、リーマン経験のある方ならば痛いほどお分かりであろう。
もしも首尾よく仕事の段取りがついたとしても、苦虫をかみつぶしたような上司の渋面、冷ややかな視線を向ける先輩への遠慮、ちくちくする同僚の羨望の眼差し……。いっそ縄うたれて針のむしろに石抱いて座る方がマシというもの。
アジア以外に位置する遙か彼方の国へ行こうと決めたリーマンの戦いは、このように、上司の机上に休暇届を遠慮がちに差し出す瞬間からはじまっているのだ。
だが、今年のゴールデンウィークは、土日が休みのリーマンならば二日間の有休を取るだけで9日間の連休になる、というスーパースペシャルウルトラMAXデラックスなカレンダー並びであった。
リーマンはみな行きたがるこの時期は、市場原理がはたらいて航空料金は普段の5割増し……。と聞くだけで腹に差し込みが来そうなボリ価格ではあるものの、気を遣わず海外へ行けるこのチャンスを逃す手はないというもの。
……というわけでまたまた行ってきた。 2ヶ月半前に行ったばかりの「埃」と「土」という漢字をあてる、国名まんまのあの国へ……。遊戯王の聖地を訪ねる萌え萌えトラベルREMIX!
エジプト初体験の観光客がまずびびるのは紙幣の悪魔的な汚さであろう。
額面は25ピアストルから100エジプトポンド(1ポンド約20円 2005年当時)まで8種類。
硬貨もあるにはあるが、物乞いにすらせせら笑われるような小さな金額なので存在しないに等しい。そしてどの店でも日本みたいに一円単位まで釣りは出してくれない。
これらの紙幣は、貧乏人の財布にはあまり入っていない100ポンド以外はまず例外なく下の写真のような恐怖のレベル9である。
ダーティー、ウエット、スメリー。
汚・湿・臭という三者揃い踏みで、トイレの便座すら消毒してしまう清潔好きの日本人が嫌がるすべてのファクターを兼ね備えている、まさに紙幣のリーサルウエポン。
新札(写真上)が手元に回ってくるのは稀、それ以外はほぼ全てがオヤジの尻ポケットで持ち主の汗をたっぷりと吸い込んだ下のレベル。
だけどこの程度じゃあまだまだ甘いんですぜ奥さん……。
私がエジプトへ行くようになったのは、意外に思われるかもしれないが遊戯王古代編にはまってからのことである。
直接会ったことのない人から私は、その理由は謎ではあるが「イモムシの丸焼きでも大喜びで食べるようなさすらいのバックパッカー」と勘違いされることがたいそう多い。
ひょっとするとこのサイト見てる人からも、かなりの高確率で「インドに行ったままイリーガルなハッパに溺れて安宿に沈没するタイプ」とか思われているかもしれない。
己の名誉のために主張しておくが、それは違う。まぁ頭ツルツルに剃るような女だし当たらずとも遠からずかも……。
そういうキャラのせいかエジプトにも、遊戯王を知る以前からすでにバリバリ行っていたように思われがち。
そういえばマハ萌え旅行の直前、当時トップ絵にあったマハードの乳首に光を慕う蛾のように吸い寄せられてきたのをきっかけに、お友達にならせて頂いたRさんも「ミキさんがエジプト行き初めてとは信じられない!何度も行ってて今度は『ちょっと神官絵の資料を取りに』ってカンジだと思ってたんですけど」と驚かれたことを、まるで昨日のことのように覚えている。
しかしじっさいは、さして旅行好きではない私は荷造りがダルいので基本的に確固たる目的(犬とか○○の○○を買うとか)のないぶらり旅はしない主義。
そして美術史&ファッション史的興味はぼんやりとあったものの、エジプトは一生行くことのない国だとなぜか決めつけていたのに……。
なんでこ~なるのっ?!(欽ちゃん跳び)
昨年初頭の初エジプトから数えて、今回ですでに四度目とは、そして9月にまた行こうとしているとは……。私はけっこうなレベルのバカなのかもしれん。ツアコンでも早稲田のエジプトゼミの学生でもないというのに!
やはり「萌え」とは人を行動に駆りたてる偉大かつ困った原動力なのね……トホホ。