エジプト猫とアヌビス

このページをご覧下さる方々は多かれ少なかれエジプトに興味をお持ちのはず。となると「アヌビス」という名を聞けば、少なくとも黒い犬頭の神様の姿が頭に浮かぶことだろう。

でも一般的には?エジプト方面に別に興味のない人にとって、アヌビスはゼウスやハムレットやアーサー王並には知られている固有名詞なんだろうか?
ふとそんな疑問を抱いた私は、手元の辞書とネット辞書を引いてみた。

すると意外なことに、ヤフー、グーグル共に「すべての辞書をさがす」を選択しても「該当無し」。これは手元の広辞苑でも同じ事。「ア」で始まる言葉は数え切れないほどあるものの、「アヌ」で始まるのはフランスの劇作家「アヌイ」(初めて聞く名だよ……)ただひとつのみ。
そうか……アヌビスってちっとも一般的な名詞じゃなかったんだ。

「アメリカ俗語辞典」では「アンク」は載っているのに「アヌビス」はない。俗語辞典に「アンク」ってのもびっくりだが、そう言われればLGBT解放運動の人とか何かのシンボルに使ってても違和感ないなぁ。

英語系辞書にはぼちぼち載っていた。ジーニアス英和大辞典では「オシリスの息子、死者の裁判をつかさどる神、ジャッカルの顔を持つ神として表される」とあり、 リーダース英和辞典では「死者の魂をオシリスの広間に導く役の、山犬の頭を持つ神」。 

さらにネットで「アヌビス」と検索してみると、グーグルではトップにアヌビスオンラインショップ「ペットの健康を 考えた良質のフード、サプリメントを取り扱っております」。なるほど、犬だしね。

ヤフーではとっぱしから「アヌビスレーベル- 男性同士が恋愛するゲームの紹介とレビュー」と出てきて、そうか!そっちできたかっ!と爆笑。そういえば聞いたことあるよ、アヌビスレーベル。
ちなみに「リラクゼーションサロン・アヌビス」ってのも……。リラクゼーションしてるうちにミイラ加工されそう。

さて、ここでは一般的にはホモゲームブランドに負けてはいるものの、古代エジプト文明的にはオシリス、ホルス、イシス、ネフティスと並んで人気沸騰の死者の守り神、黒犬姿のワイルド系、カッコマン・アヌビス様のお姿のほんの一部を紹介しよう!

バシェドゥ墓のアヌビス
デルエルメディーナ、バシェドゥの墓 埋葬室の入り口を守る二頭のアヌビス
バシェドゥ墓のアヌビス
バシェドゥの墓。口元の笑いジワはジジィっぽく見えるので気をつけましょう。
センネジェム墓のアヌビス
センネジェムの墓でがんばってる双子
センネフェル墓のアヌビス
センネフェルの墓で監視の目を光らせる、私でも描けそうなぞんざいアヌビス
センネジェム墓のアヌビス
センネジェムの墓でミイラ制作中。 線が細くて何となくプレッシャーに弱そうだ。
アビドスのアヌビス
アビドスのセティ一世葬祭殿にいる、すんごい男前のアヌビス。パリコレ並みの体躯には、思わず「お嫁にもらってぇ!❤️」と叫びそう。

イムアンク墓のアヌビス
一方こちらはジェドアムン・イムアンク墓の投げやりすぎるアヌビス。 拝んでもご利益は全く期待できなさそうな雰囲気だな!
シプタハ王墓のアヌビス
王家の谷、シプタハ王墓のアヌビス。 お兄さん!前足がちょっと短すぎですよ!
ツタンカーメン王墓のアヌビス
ツタンカーメン王墓から出土のアヌビス。キリッとした目元が長男的しっかり感にあふれている。
インヘルカウ墓のアヌビス
頭が犬の男だからって、全部が全部アヌビスってわけじゃないところがエジプトのくせ者なところ。 これは唇が赤くてカマっぽいインヘルカウさんに敬意を表する「ぺ」と「ネヘン」の魂。
インヘルカウ墓のアヌビス
太陽の船を曳くカッチョいい四頭。インヘルカウの墓。
インヘルカウ墓のアヌビス
こちらもインヘルカウ墓。 オイっ!お前ベタやっとけ!と先輩に言われる画工見習いの姿が目に浮かぶ……。
ファラオ村のアヌビス
シュール!!カイロ・ファラオ村でレプリカ聖船の周りに無造作に散りばめられたアヌビスお面。 神官たちはこういうマスクをかぶって儀式に参加することもあった。
ファラオ村のアヌビス
同じくファラオ村のツタンカーメン室に座っている、かの有名なあのアヌビスのレプリカ。 オリジナルより仔犬感が強い。生後6ヶ月頃のあどけない感じがする。パンのひとかけでも投げてやったらずっと後ついてきそう。
ツタンカーメンのアヌビス
こちらがかの有名なツタンカーメン王墓のアヌビス。幼稚園児だった私は「世界の国と人・エジプト」という大判写真集に載っていたこのアヌビスに心を奪われ、寝る時も本を枕元に置くくらい憧れていたものだ。
ツタンカーメンのアヌビス
壊そうと思えばなんぼでも壊せる、人間の善意を信頼したディスプレイ方式。