2019年11月26日(火)

本日はちょっとびろうな話題です。気をつけて!

マヤちっち

「見て見てーっ!!マヤが男ちっちしてるぅぅううーっ!!」
姉の叫びを聞いたヘボピーが、敷きっぱなしの布団で足を滑らせながらベランダに駆けてきた。だが時すでに遅し。その両眼に映ったものは、心地よく放尿を終え、すでに地に着いた犬の四つ足であった……。

ご存じだろうか。牡犬も仔犬の頃は牝犬と同じように四つ足を接地させ、腰を落として排尿する。
それが成長するに従って、後足を上げて電柱にジャーっとやるようになるものだ。朝夕の街のあちこちで目にする馴染深い日常の一コマである

だが、我が家で「男ちっち」と称するところの、このジャースタイルは、牡犬にとって必ずしも「当たり前」ではないことを初めて知った。
……というのは、これまでに生活を共にした犬たちは、後足の筋力が低下するレベルまで老いる前にさっさと天国に駆けて行ったからである。

牡犬も老いると「男ちっち」ができなくなる。そんな知っても知らなくてもどっちだっていい知識を与えてくれた犬は、マヤ・ザ・コッカーが最初にして多分最後の犬になるだろう。

マヤちっち
昨年10月にはこんなに高々と足を上げて男ちっちしていたのに…
今年の3月にはここまでレベルダウン。あーしんど……って心の声が聞こえてくる。

夏が終わる頃まではマヤは男ちっちをしていた。三本足でバランスを取りながら放尿するのは老犬にとっては大変なことだろう。
でも、良きにつけ悪しきにつけ、一度決めたスタイルは頑として変えない性格ゆえ、ぐらぐらしながらも後足を上げていた。
電柱があるわけではないから「匂い付け」のためではない。ただ、「ちっちの時には足を上げる」と一度決めたからにはやり通す!動機はシンプル。男塾の犬だ。

だが、そんな頑固者も忍び寄る老いには勝てないようだ。
「男ちっち」の回数は徐々に少なくなり、その代わりに腰を落とした「女ちっち」をすることが増えてきた。

16才を超えても凛として足を上げていた犬が、腰を落として背中を丸め、しょぼしょぼとキレに欠ける水流を放つ姿にはそこはかとなく侘しいものがあり、私まで猫背になってしまう。

そんな次第で今や「男ちっち」はプレミア付きモーション。「足を上げて排尿」イコール「元気がある」印だから、姉妹間で「ちっち情報」を共有しているくらいだ。

「今日は男ちっちしたよ!マンションの人に『マヤちゃん頑張ってるわねぇ』って褒められたから嬉しかったんかなあ」だとか、「来てーーっ!見てーーっ!マヤが男ちっちしてるーーっ!」と犬の排尿スタイルで一喜一憂。
稀に足を上げようものなら「すごーい!スーパーじぃじ!」と手を叩いて囃し立てる毎日である。

足を高く上げるどころか男ちっちすることすら滅多になくなって…
マヤちっち
今ではいつ見ても女ちっち。さみしい……。

17才にも近くなった今なお、若かりし日のならわしを思い出したように、地面から1センチほど足を浮かせて排尿する老犬を見るたびに、「もっともっと可愛がってやろう……」と姉妹は固く心に誓うのであった。