2019年12月7日(土)

カラ・テパより
旅行者としては訪問がほぼ不可能な国アフガニスタン。隣国タジキスタンから遠くかの地をのぞむ

今日は去る12月4日にジャララバードで銃撃を受けて命を落とされた中村哲さん、ドライバーのザイヌラさん、そして名前の伝わってこない4名の警備の方々に深い哀悼の意を表したいと思います。

私は著書を通して氏の人となりを知るのみながら、『ペシャワールにて 癩そしてアフガン難民』『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束』といった本に触れた時、世の中にこれほどまでに気高い人、「愛の人」が存在するのか!と衝撃を受けて以来、中村さんは最も尊敬する人の一人でした。

衝撃的なニュースが報じられてからこちら、様々な人々が氏への思いを語り、早すぎる死を惜しんでいます。中でも私の心に残っているのは想田和弘さんのツイートです。

現地の追悼式の様子を報じたニュースでは、アフガン人の青年が「中村さんを通じて私たちは日本から愛を受け取っていました」と涙を流していました。
中村さんの中には「日本」も「アフガニスタン」もなく、ただ「苦しんでいる人たち」があるだけだったと思うけれども、数え切れないほど多くの人々の頭上に愛を降り注いだことは疑いようがないでしょう。

アフガン難民の苦しみに心を痛め、彼らが自らの足で立てるようにと、用水路の建設を通じ10万人の農民の生活基盤を築いた中村さん。あと20年は頑張りたいと語っていらしたと聞くと、納得のゆくまでやり切ること叶わなかった悔しさはあることと思います。

でも、私は今、キリスト教徒であった中村さんを思いながら、ふとἈνάστασις アナスタシスという言葉を思い出しました。
アナスタシスとは「立ちあがること」——キリストと人類全体との復活。

人を愛し、真心を信じたカカ・ムラド——「ムラドのおじさん」の切り開いた道は、必ずやより良い未来に通じていると信じています。

中村哲さん、長い長い戦いお疲れ様でした。中村さん、そして共に犠牲になられたアフガニスタンの方々が安らかな眠りにつかれますよう、心よりお祈り申し上げます。

タジキスタンの空
タジキスタン・ペンシケント遺跡の上を空高く飛んでいた鳥