さて、王都がここに置かれていた時代の前後は、アメンホテップ大王、女傑ティイ、「美女は来たりぬ」ネフェルティティ、イケイケ軍人ホルエムヘブ、少年王ツタンカーメン……と派手な役者が揃ってゴージャスこの上ないし、愉快なできごとも一杯なので、アマチュアエジプトファンの間では圧倒的な人気を誇っているようだ。
かく言う私もその一人。ホルエムヘブファンとしても彼の仕えたアクエンアテン王の築いた都は、ミカ・ワルタリやアガサ・クリスティー作品をネタ元に、あらぬ想像をあれこれ巡らせ萌えたぎる上で、どうしても落とせないポイントなのである。
ただ、エジプト中部(中エジプト「なかエジプト」と読む)はテロの可能性がなきにしもあらずだったせいで、つい最近まで渡航延期勧告が出ていた土地。観光客が完全に自由に行動することはできない。
私が最後にアマルナに行ったのは2005年5月ゆえ、情報が若干古いかも知れないが、渡航延期勧告が解除されてかなり経っていたはずの当時でも、警察のガードと事前の行動予定提出無しでは自由に動けないという不便さがあった。
前後を警察車両にガッチリガードされた上、自分の車にまで警察のアンちゃんが乗り込んでくるなんて……も、もうお嫁に行けない!
日本から出ているツアーを見ても、ここを訪れるコースはごくわずかである。
とはいえ商売熱心な旅行会社のこと、もしここがアビドスのようにゴージャスな遺跡ならば、ツアーの数ももう少し多いんじゃなかろうか。
観光地としてのアケトアテンは、なぜ今ひとつ盛り上がらないのか?
……それは「マニア以外にはキツい瓦礫の山だから」。
きっとこの一言で片づけられると私は確信する。